長居したいお店って? ?サイト滞在時間と購買行動?

先日、仕事から帰ってテレビの経済ニュースを観ていたら、興味深い特集が放送されていた。郊外型の巨大ショッピングモールの中心にゲームコーナーを設置したことで、来店者の滞在時間が長くなり、結果的に顧客一人あたりの売上単価の増加に成功した、という。

さらに、書籍の他に CD や DVD、雑貨や玩具などを扱う「遊べる本屋」を標榜する書店をテナントに加えたショッピングモールが、来店者の滞在時間を長期化させ、モール全体の売上向上につなげた、という事例も紹介されていた。

一見すると、滞在時間と売上単価は関連性がないように思えるが、先のとおりに、実際にはそれぞれに大きな因果関係があるようだ。こうしたリアルの世界でのマーケティングは、当然ネットの世界でも、とりわけネット通販においても応用が効くだろう。

検索ポータル「Yahoo! JAPAN」内にある「トップメッセージ」では、ヤフー株式会社 井上雅博社長が国内最大のオークションサイト「Yahoo!オークション」について、次のようにコメントしている。

「Yahoo!オークションは、2006年3月期第4四半期の一日平均取扱高が19.1億円、2006年3月末時点のストア数が6,878店となっており、他の追随を許さない国内最大のオークションサイトとして、圧倒的な参加者数による豊富な商品が利用者の滞在時間を増やし、取扱高を増やすという好循環を生んでいます」

しかし、一般的な EC サイトのオーナーや企業の Web 担当者には、まだこの発想が浸透していないのではないかと感じる。なぜなら、アクセス解析の重点を、“目に見える成果”に置きがちだからだ。すなわち購入数、来訪者あたりの購入率、顧客獲得単価が重視される傾向がある。来訪者の滞在時間を指標にサイト改善を行う必要性は、まだ認められてはいないような気がする。

そこで今回は、来訪者のサイト滞在時間を指標として改善策を考えてみたい。サイト滞在時間を増やすためには、3通りの方法が考えられるのではないか。ひとつは、扱う商材のジャンルや商品数を増やすこと。もうひとつはミニゲームや動画など、エンターテインメント性の高いコンテンツをサイト内で展開すること。さらに、商材に関してできるだけ多くの情報を提供することだ。

だが、商品点数の増加はサイト改善だけにとどまらず、在庫スペースや仕入れの問題も発生するため、簡単とはいえない。また、エンターテインメント性の高いコンテンツは、EC サイトよりもメーカー系サイトで積極的に採用されている。そのためブランディングには効果的かもしれないが、直接商品購入に結びつく可能性は低いかもしれない。また、ミニゲームや動画となれば、制作するのにそれなりの費用もかかる。

つまり、EC サイトにおいて来訪者のサイト滞在時間という視点でサイト改善を行うのであれば、商材に関してできるだけ多くの情報を提供することこそ、最適ではないだろうか。

依然として EC サイトのなかには、商品名や値段など、売るための基礎情報しか掲載していないサイトも多い。それだけでは来訪者が長居できる環境にはないし、不親切なサイトだ、という印象をも与えかねない。魅力的で長居したくなるようなサイトを目指すのであれば、商品選びの手助けや、アフターフォロー、また商品の豆知識などを提供すると良いかもしれない。実のところ、そうすることが SEO にも効果があることが多いからだ。

例えば、Google で「ネクタイ」と検索してみて欲しい。検索結果の1位から3位にはネクタイ販売サイトのトップページではなく、ネクタイ販売サイトが提供する「ネクタイの結び方」という情報ページが表示される(2006年12月13日現在)。

これは、有益な情報を提供するページに対して、外部のサイトからリンクが集まった(または、良質なリンクが得られた)ことで、トップページよりも該当の下層ページの評価が高まったことが影響していると考えられる。実際に1位になったサイトで調べてみると、トップページのリンク元が3件であるのに対し、Google で1位表示される該当ページは17件となっている。

もちろん、上記のようなケースはまれかもしれないが、ただ商品ページだけを掲載するよりも、併せて情報ページも拡充することで、サイトのボリューム自体が増える。結果としてサイト評価が高まる、という副次的効果にもつながる。

実際の施策は商材などによってケース バイ ケースになるだろうが、来訪者のサイト滞在時間を延ばし、売上単価を増やすという好循環を生み出すために、商材に関してできるだけ多くの情報を提供する、という方法を考えてみてはいかがだろうか。

(執筆:R&Dグループ 田崎奈央子)

インターネットコム - 2006/12/14